川崎医療生活協同組合 久地診療所 KUJI CLINIC

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「No.12 診断に患者さんが関わる〜Patient engagement(患者協働)という考え方」掲載しました。

2017/12/21

 11月のある週末、大阪で開かれたとあるセミナーに参加してきました。タイトルは「診断プロセスにおける患者協働(patient engagement)」です。患者協働は、患者さんの安全を守るために患者さん自身に関わってもらう、という比較的新しい考え方です。そして、診断プロセスという言葉が頭についていますから、要するに診断の誤り(診断エラーと呼びます)を防ぐために、患者さんにも協力してもらいましょう、ということです。

 診断は医師の仕事なのに、どうしてそこに患者が関われるんだ、と思われるかもしれません。しかし、診断はとても複雑なプロセスです。これも驚かれるかもしれませんが、いくつかの研究の結果、プライマリ・ケア(地域に根ざして幅広い年齢層・疾患を対象とする医療のこと)における診断エラーの割合は2〜10%と言われているそうです。エラーは一定の確率で起こるもので、ゼロにすることは実質的には不可能。患者さんの安全を守るために、エラーの起こる危険性をいかに低く抑えるかということに取り組んでいるのです。
 エラーを防ぐ初歩的かつ有効な手段のひとつが、チェックポイントを増やすということです。たくさんの目が入れば、それだけ有効な予防策となるのです。久地診療所でいえば、医師、看護師、技師、事務が職務としてその役割を担っていますが、そこに患者さんが入ることで一枚厚みを増せば、それだけエラーが起こる可能性が低くなる、ことにつながります。
 そこでひとつ紹介したいのが、アメリカで行われている「Ask Me 3(医療者に投げかける3つの質問)」というプロジェクトです。これは、患者さんが医療者に対して、以下の質問を投げかけることで、患者さんが自分自身の健康状態を把握し、健康維持増進に役立てることを目的としています。

● 私にとって、重要な問題はなんですか?
● 私がする必要のあることはなんですか?
● 私がそれをすることがなぜ重要なのですか?

…まあ、そんなことを医者に訊けるくらいなら苦労はしないよ、という苦笑いが聞こえてきそうではあります。実際、私が参加したセミナーでもそういう雰囲気になりました。ただ、こういう質問をする必要がある、と心の準備をしてから医療者に会えば、多少は訊きやすくなるだろうと思います。もちろん、患者さんと医師が信頼関係で結ばれていること、医療者がコミュニケーションスキルを磨くこと、患者さんがからだと健康に関心を持ち適切な知識を持つこと、が前提となるのは言うまでもありません。

医師 M・K