「No.7 子どもで注意すべき食べ物〜子どもの食中毒を防ごう!〜」掲載しました。
2017/10/19
昼間はまだ暑いですが、朝夕は涼しく、鈴虫も鳴き始め、秋を感じる今日このごろ。さて、今回は親子カフェでも紹介した「子どもの食中毒」についてお話します。
今年は乳児ボツリヌス症で赤ちゃんが亡くなる、というショッキングな事件がありました。
“1歳未満のこどもにはちみつは厳禁”という医師としては当たり前の知識が、一般の方々には浸透していないということが明らかになった事件であり、医師として食中毒予防に関する知識を広めなくてはいけないと痛感しました。そこで、テーマを「子どもで注意すべき食べ物」としました。食中毒は正しい知識があれば、そのほとんどを予防することができます。
<食中毒の危険性がある食物>
1.はちみつ
ポイント:1歳未満にはちみつは厳禁!加熱しても食中毒は防げない!
赤ちゃんの未熟な腸にボツリヌス菌が侵入すると、ボツリヌス菌が毒素を作り、それが全身に広がることで発症します。症状は、便秘、全身の筋力低下(例:母乳の飲む力が弱くなる、泣き声が小さく弱くなる、まぶたが下がる)です。やっかいなことに、ボツリヌス菌は普段“芽胞(がほう)”という冬眠カプセルの中にくるまっており、家庭調理の加熱程度では死にません。健康な1歳以上の子どもでの感染の可能性は極めて低いと言われています。1歳未満へのはちみつ摂取は避けましょう。
2.ぎんなん
ポイント:ぎんなんは“年の数まで”!加熱しても食中毒は防げない!
ぎんなんは食べ過ぎると中毒を起こし、嘔吐やけいれんなどを起こします。ぎんなんに含まれる毒素がビタミンB6の働きを阻害することが原因です。この毒素は煮ても焼いても消失しません。中毒量は、子どもで7〜150個、大人で40〜300個と言われていますが、何個までは安全という明確な基準はありません。子どもに食べさせることは控え、与えるとしても一度に多く食べさせないことが重要です。
3.長時間室温で放置した粉ミルク
ポイント:調整したミルクは2時間以上放置しない!2時間以上経過したら与えずに廃棄!
極微量ですが、粉ミルクには「サカザキ菌」 や「サルモネラ菌」といった細菌が入っていることがあります。乾燥した粉ミルクの中では増殖しないものの、死なずに生存し、粉ミルクを作った後、時間が経つと増殖してしまいます。適切な方法で粉ミルクを溶かしたり保存したりすれば、サカザキ菌やサルモネラ菌に感染するリスクを減らすことができます
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出典:横浜市衛生研究所「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要」より転載
4.生卵
ポイント:生食を避ける!卵が完全に固まるまで十分加熱する!
卵はサルモネラ菌による汚染の可能性があります。ヒビの入ったものや割れている卵は、外部の細菌に汚染されている可能性があるので、なるべく使用を控えましょう。生食用の卵であっても子どもには生食させることは控え、卵が完全に固まるまで十分加熱してから食べさせましょう。
5.加熱不十分の肉
ポイント:生食厳禁!十分加熱する!生肉用と食べる用で箸を分ける!
生肉には腸管出血性大腸菌(O157 等)、サルモネラ、カンピロバクター等の食中毒菌がついていることがあります。これらの食中毒は症状が重く、死亡することもあります。肉類は生で食べさせないで、十分に加熱して食べるようにしてください。ハンバーグ等も中まで十分に火を通しましょう。 焼き肉のときは、生肉を取る箸と食べる箸を使い分けましょう。
6.生の魚介類
ポイント:子どもには生で与えない!十分加熱する!
生の魚介類は腸炎ビブリオに汚染されている可能性があり (主に夏期)、またカキ等の二枚貝ではノロウイルスを持っていることがあります。子どもには、なるべく加熱調理したものを食べさせましょう。
7.古くなった魚
ポイント:古くなった魚は食べない!加熱してもヒスタミン中毒は防げない!
サバ科(マグロ、カツオ、サバなど)の魚類は、古くなって腐敗すると「ヒスタミン」というアレルギー症状を起こす物質を作ります。このような魚を食べると、じんましんや嘔吐・下痢などのアレルギー症状を起こすヒスタミン中毒を発症することがあります。ヒスタミンは加熱しても消えず、一度作られると、生魚、冷凍、調理した魚だけではなく、缶詰、干物、燻製でも中毒を起こします。 新鮮な魚を保存する場合が冷凍し、古くなって魚は食べないようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。日本は伝統的に生食が多く、食中毒にかかりやすい国といえますし、ぎんなんを食べるのもの日本人くらいのようです。繰り返しますが、食中毒は正しい知識があれば、そのほとんどを予防することができます。正しい知識をもって、食中毒を予防しましょう。
医師 Y.S
役立つサイト
1.「教えて!ドクター」乳幼児で注意する食べ物とその予防について
出典:佐久医師会「教えてドクター!プロジェクト」の著作物より転載
2.横浜市衛生研究所. 乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要